解決の道筋が見えない待機児童問題
匿名のブログ記事を発端に国会で一大議題となったのが「待機児童問題」です。
待機児童問題は以前から広く取り上げられてきましたが、今ひとつ実態がつかみきれないということもあり対策はそれぞれの自治体の努力次第とされてきたのが実情です。
私が現在勤務をしているのは認可保育所ですが、認可された保育所に入りたくても入れないという子供さんのことはよく話として聞いておりその深刻度も相当なものと理解しています。
子供を持たない一般の人や世帯からは「少子化が進んでいるのだから、待機児童問題はそのうち放っておいても解決するのでは?」といった意見が聞かれることもありますが、実はその認識は誤りです。
というのも数十年前と比較して、人口の都市集中が進み、かつ専業主婦とサラリーマンという一般的家庭の形が大きく崩れているためです。
1990年代の初めには既に共働き世帯が専業主婦世帯を上回っており、急速に保育所の定員数のニーズが高まってきているのです。
もう一つ待機児童問題を語る上で見逃してはいけないのが2001年より国は「待機児童」の定義を大きく変更したことで、2000年を境に大きく待機児童数が減ったというような見た目のデータ変化が起こっていることです。
それまでは国の認可保育所に入りたくても入れない人を「待機児童」としていましたが、2001年以降は地方自治体が独自に認可する認可外保育施設を利用していればその子供は待機児童ではないということになっています。
現在保育のための施設は他に「認定こども園」や「家庭的保育事業・保育ママ」「預かり保育付き幼稚園」といったように複雑になっており、実態はますますつかみにくくなっているのが現状です。
「保活」をしない親は無責任?!
就職活動同様に、入れる保育所を探して入園ができるように積極的に働きかけることを「保活」と言います。
この「保活」というのは氷河期における就職活動よりもさらに激化したものとなっており、「保活を意識しないで子作りをすること自体が無責任だ」といったような意見までも聞かれるようになっています。
具体的な保活の方法としては、まずそれぞれの自治体の保育園数や入所状況を確認しておくとともに、女性は育休からの復帰のタイミングと保活の時期をスケジュールすることがあります。
認可保育所に入るためには事前に自治体に申し込みをし、そこで「点数」という指数を計算されることにより入所できるかどうかの判断を受けることになります。
この「点数」とは母親が仕事をしているかどうかや復帰の時期はいつか、保育園の近くに住所があるか、祖父母に助けを求められる距離ではないか、子供に障害がないかといったようなことによってプラスマイナスがされていきます。
一応この点数の内訳は一般公開されないことになっているのですが、保活をする母親たちの間ではかなり細かく点数計算のためのマニュアルが出回っており、子作りをする前から綿密に点数を上げるための方法をとっていくということが常識化しています。
決して大げさな言い方ではなくごく普通に結婚生活を送りそこで子供ができてから入れる保育所を探すという方法は、少なくとも都内においては「保護者失格」という烙印を押される要因になっているのです。
誰が悪いということではないのかもしれませんが、こうした状況はますます少子化を促進していくだろうということは誰でも容易に想像がつきます。
保育士に求められるスキルも上昇
保育士の就業環境についても待機児童問題ではよく語られることです。
確かに同年代の会社員に比べて、仕事の内容や拘束時間に対しての給与待遇は恵まれているとは言えません。
現在若干の改善が入ってきているようですが、それ以上の速さで保育士として求められるスキルが高まってきていることを感じます。
色々と厳しい状態ですが、私は今の仕事が好きですし一人でも多くの子供さんや保護者さんに笑顏になってもらえることが励みなので今後できるだけ長くこの業務に携わっていきたいです。